(書評)人間の尊厳とはなにか

単著
2002.6.14    
「週間読書人」2002年6月14日
金子晴勇『ヨーロッパの人間像――「神の像」と「人間の像」の思想史的研究』知泉書館、2002年の書評
  「人間の尊厳」は人権や生命倫理が論じられるとき、時代のキーワードとなっている。わが国においても、「ヒトゲノム研究に関する基本原則」(2002年)など近年の指針等で、必ずと言っていいほどこの言葉が登場する。しかしこの言葉の意味をわれわれはどれだけ理解しているだろうか? これは日本人にはなじみのうすいヨーロッパ起源の言葉である。そこにはヘレニズム起源の「人間の尊厳」とヘブライズム起源の「神の像」という二つの流れがあった。
 本書はこの二概念の複雑な歴史を解明するなかで、古代から現代に至るヨーロッパ的人間像が孕む本質的問題をえぐり出している。この二概念が、キリスト教古代と中世、ルネサンスと宗教改革、さらに啓蒙時代から現代まで、どのように影響しあいながら時代を彩ってきたかを文献に即して解明し、<神の像としての人間の尊厳>のなかにヨーロッパ人間観の完成した姿を見いだした問題作。金子晴勇氏は昭和31年静岡大学文理学部哲学科卒。平成2~7年静岡大学人文学部教授。